ミニマリストな Vimmer におすすめしたい履歴管理プラグイン oldfilesearch.vim
この記事は Vim Advent Calendar 2016 (その2) の 4 日目の記事です。
追記:oldfilesearch.vim のリポジトリへのリンクを貼り忘れていたので追記しました。
履歴管理プラグインへの懸念
履歴管理プラグインには様々なものがあります。 例えば MRU.vim であったり、unite.vim と連携する neomru.vim といったものがあります。 しかしこういった履歴管理プラグインは大体次のような処理を行います。
- autocmd でファイルを開いた時にファイル名を記録する
- 履歴ファイルを作成してファイル名等の履歴を書き込む
この方法だと
- autocmd を使うため Vim の動作が重くなる
- ファイルへの書込み処理にバグがあった場合、(ファイルの一覧を表示したり autocmd が実行された時点で) 動作が重くなったり、履歴が消えたりといった事が考えられる
しかし今回紹介する oldfilesearch.vim はこれらの方法は取りません。 oldfilesearch.vim は viminfo に記載の情報からファイルの一覧を取ってくるので、ファイルが壊れたり動作が重くなったりする心配がまずありません。
操作方法
oldfilesearch.vim は :OldFileSearch
コマンド1つだけを提供します。
:OldFileSearch ファイル名のパターン1 [ファイル名のパターン2 ...]
以下は vimrc
を含むファイルを開く例です。
:OldFileSearch vimrc
マッチする候補が複数あると以下のようなプロンプトが出て、
一番左の番号を入力してエンターを押すとファイルを開く事ができます (以下は bash
を含むファイルを開いた時の例です)。
:OldFileSearch bash Select old file: 1) <10 ~/.bash_profile 2) <56 ~/.bashrc 番号と<Enter>を入力するかマウスでクリックしてください (空でキャンセル):
<Tab>
で補完もできます。
:OldFileSearch plugin/ .vim<Tab>
v:oldfiles
先程、viminfo に記載の情報からファイルの一覧を取ってくると言いました。
詳しく説明すると、v:oldfiles
という Vim 組込みの変数からファイルの一覧を取得します (このリストは :oldfiles
コマンドでも確認できます)。
ではこの :oldfiles
、v:oldfiles
とはどのような物なのでしょうか。
:help :oldfiles
からの引用です。
:ol[dfiles] viminfo ファイルにマークが記録されているファイルのリス トを表示する。起動時にこのリストが読み込まれ、 ":rviminfo!" を行った後でのみ変更される。|v:oldfiles| も参照。このリストで表示される番号は |c_#<| で使うこと ができる。
:help v:oldfiles
からの引用です。
v:oldfiles 起動時に |viminfo| から読み込まれたファイルの名前のリスト。 これらはマークを記憶しているファイルである。リストの長さの上限 はオプション 'viminfo' の引数 ' によって決まる(既定では 100)。 |viminfo| ファイルが使われていない時、リストは空となる。 |:oldfiles| と |c_#<| を参照。 このリストは変更可能であるが、後で |viminfo| ファイルに書き込ま れるものには影響しない。文字列以外の値を使うと問題を引き起こす だろう。
つまり、viminfo ファイルに保存されているファイルのリストだという事が分かります。
…とは言ったものの、正直今これを書いている自分が (viminfo ファイルのどの情報から取得するのか等) 詳細な挙動を把握できなくて、
実際に :oldfiles
の結果と viminfo ファイルを見比べながら調べたので、
詳細な仕組みを解説してくれる人がいたらうれしいです…
見比べた結果、大体以下の項目からファイルリストを取ってくるようだということが分かりました。
- ジャンプリスト
- ファイルマーク
- ファイル内マークの履歴
一つずつ解説していきます。
ジャンプリスト (:help jumplist)
viminfo ファイルでは「# ジャンプリスト (新しいものが先):」または「# Jumplist (newest first):」という行の下にあるエントリです。
<C-o>
や <C-i>
で移動できるファイルの事です。
エントリ数の上限は50個となっています。
ファイルマーク (:help viminfo-file-marks)
viminfo ファイルでは「# ファイルマーク:」または「# File marks」という行の下にあるエントリです。
番号マーク ('0 〜 '9) ですね。
適切なタグがないですが、:help mark-motions
してちょっと下にいった所 (/^'0
で飛べる場所) にある文章を引用します。
直接セットすることはできず、viminfo ファイル |viminfo-file| を使っている場合にのみ存在します。 基本的に '0 は最後に Vim を終了したときのカーソル位置であり、'1 は最後から1個前の 位置、などなどです。特定のファイルを番号マークに保存しないようにするには 'viminfo' の "r" フラグを使ってください。参照: |viminfo-file-marks|
豆知識ですが、つまり「0」のマークは最後に開いたファイルとその位置を記憶しているので、 Vim を起動して「'0」(シングルクォート + 0) または「`0」(バッククォート + 0) と入力すればそのファイルを開けます。
ファイル内マークの履歴
viminfo ファイルでは「# ファイル内マークの履歴 (新しいものから古いもの):」または「# History of marks within files (newest to oldest):」という行の下にあるエントリです。
ファイル単位の jumplist のようにも見えましたが…すみませんよく分かりませんでした。
viminfo に保存するファイル数の上限を設定したい (:help viminfo-')
viminfo の '
(シングルクォート) フラグを使います。
' マークが復元されるファイル履歴の最大値。オプション 'viminfo' が空でないときは、常にこれを設定しなければならない。 また、このオプションを設定するとジャンプリスト |jumplist|と |changelist| も viminfo ファイルに蓄えられることになる。
viminfo に保存したくないファイルを指定したい (:help viminfo-r)
viminfo の r
フラグを使います。
:help viminfo-r
の説明が分かりやすいので Vim の日本語訳 help から引用します。
r リムーバブルメディア {訳注: USBメモリ、CD-ROM等の取り外せる記 憶装置。この中身は取り替えてしまえば全く変わるので、ファイル履 歴の意味がない} の指定。引数は文字列 (次の ',' まで) である。 これは複数個指定できる。それぞれがマーク履歴の対象外になるパス の先頭部を指定する。これはリムーバブルメディアを避けるためであ る。 MS-DOSでは "ra:,rb:", Amigaでは "rdf0:,rdf1:,rdf2:" とす るとよい。ここに一時ファイルを指定することもできる (Unixの例: "r/tmp")。大文字と小文字の区別はない。それぞれの 'r' の引数の最大長は 50 文字である。
ただ、.git/COMMIT_MSG
のように中間のパスでの無視はできないようなので、諦めるしかないかもしれません。
ただそもそも oldfilesearch.vim ではファイル名を入力して目的のファイルを開くという操作方法なので、
<Tab>
補完を使わなければ開かないファイルが目に入る事はありません。
…しかしそれでも <Tab>
をよく使うのでどうしてもそういったファイルを除外したい!という方もいるかもしれません。
そういった方のためにやり方だけ紹介します (俗に言う「読者の課題」です)。
冒頭で挙げた :help v:oldfiles
の文章で目敏く見つけた方もいるかもしれません。
このリストは変更可能であるが、後で |viminfo| ファイルに書き込ま れるものには影響しない。文字列以外の値を使うと問題を引き起こす だろう。
つまり Vim が起動した後なら v:oldfiles の内容をいくらでも変えられるという事です。
つまり v:oldfiles からいらないファイルを除外してしまえばいいのです (現に let v:oldfiles = []
としてリストを空にすると :OldFileSearch
コマンドは過去に開いたどのファイルも開けなくなります)。
しかし viminfo ファイルには変更した v:oldfiles
の内容は反映されないので、
Vim の起動時やプラグインの起動時等のタイミングで毎回除外する必要があります。
感想
このプラグインを見つけた経緯としては、実は自分が v:oldfiles
の存在を知って
「これで履歴プラグインを作れないか?」と思い誰かすでに作ってるかと思って検索したら
案の定 oldfilesearch.vim があった…という経緯です。
自分は飽きっぽいので注力するプラグインはなるべく減らしたいという気持ちがあり、
誰かが作ってくれてるならプルリクエストを送ってメンテナンスを押しつけ改善していった方が皆がハッピーになれるでしょう。
何度かプルリクエストを送って分かった事としては、 作者はおそらくミニマリズムで、おそらくこれ以上大きな変更は加えられないと思います (PR を見てもらえば分かると思いますが、私も何度も PR を送りましたが、ほぼリジェクトされています :p)。 ファイルを履歴から開くという操作は (人にもよりますが) おそらく日常的に使われる操作であると思うので、 そういったプラグインが安定しているというのは安心して使っていられますね。
あと、oldfilesearch.vim では最小限の UI しか提供していませんが、 「oldfiles を使う履歴管理プラグイン」というアイデアは他のプラグインでも応用できると思います。 例えば neomru.vim などのプラグインが一時ファイルではなく oldfiles からファイルリストを取得し、 一時ファイルへの書込みはオプションなんかで無効にできるようにする、という作りにする事も可能でしょう。
おまけ
「'」(シングルクォート) と「`」(バッククォート)、この2つのコマンドは 実は違う意味のコマンドだというのをこの記事を書いてて初めて知りました… 詳しくは
:help mark-motions
を参照してください。あと、最近*1 vim_dev によくパッチ出してる Yegappan さんって MRU.vim とか taglist.vim の作者さんだったんですね。気付きませんでした。
*1:目に付いたのは最近ですが、昔はどうだったか調べてません…
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リストについて
昨日に引き続き、またまたネタを日記ブログから持ってくるパターン。 何となく読んだり見たりしている内に頭に思い浮かんだものを書き出した文章の練習みたいなもの。 データ構造としてのリストだったり、もっと抽象的な数珠繋ぎとなった何かについて書いてたり、まとめるために書き出した文章の割に話がまとまっていない。
要素が隣接している必要がない
リストと配列は様々な点で違う。 まずリストは各要素がメモリ上で隣接している必要がない。 つまりリストは配列のように連続的なメモリを取れない状況でコンテナを実現する方法でもある。 細かい要素の確保と廃棄が頻繁に起こるソフトウェアで、あまりメモリが潤沢でない組込み環境を想定する。 また廃棄と確保のサイズが同一のものだとする。 すると廃棄した後の確保が(メモリのコンパクションを行わずとも)確実に行える保証ができる。 具体的に言うと、あるクラス・構造体 A を廃棄した後、A を再び確保しようとした時に必ず確保できる。 よってコンパクションのオーバーヘッドを避ける事ができる(けど割り当てる時には空いてる場所を探すんだからコンパクションを行った方が効率が良いような気がする…)。
もちろんランダムアクセスには弱いので、そこは工夫する必要がある。 例えば循環リストにして頭と尻を繋げれば、最悪 n/2 の時間で目的の位置に辿り着ける。 ただ、輪っかの反対の位置のポインタを保存してすぐ飛べるようにしたり、要素数に比例してポインタの数を 2個、4個、8個 … と増やしていったりと工夫すれば、ほぼ対数時間で(二分探索的に)目的の位置に飛べるような気はする。
要素のようなリスト
次に、これはデータ構造としてのリストとは別だが、要素のようなリストというものが考えられる。 どういう事かというと、例えば関数のリストがあったとして、先頭の関数を呼べば後続の関数が順番に呼ばれるという関数が作れる。
それは構造的にはリストと同じなのだけど、コンテナではなくただの要素(関数)として扱える。 コールグラフから見ればリスト、データ構造としては関数。 関数とリストを組み合わせる事で、ただの要素かと思ったら入り口で何個も連なった要素の先頭ポインタだった、という事ができる。 再帰も同じ構造。
Lisp のコンスセル
今度は Lisp のコンスセルのデータ構造の話。 Lisp のセル1つは CAR 部と CDR 部に分かれていて、ポインタ2つだけで表せる。 Lisp のリストの値というのはリストの先頭のセルなので、メモリ上ではポインタ2つの構造体1つ分で表せられる。 ELIS という Lisp マシンではメモリ・レジスタと呼ばれるものでセル1つ分を表せるらしい。 セル1つはアトムかリストを(参照ではなく)保持する。 つまりアドレスによるメモリの間接参照ではなく、セル1個分の構造体をメモリ・レジスタ上に記憶する。 この構造体の大きさはマシンによって異なるが、大体の内容としては「タグ + データ部」で、タグは「アトムかセルか」「型情報」「ガベージコレクション用の情報」等の情報を保持する。 また、データの呼び出し幅を広げて CDR 部を一気に読み取ってメモリ呼び出しを減らす等、正に Lisp を効率的に実行するためのアーキテクチャといえる。